幼なじみ〜first love〜
「彼女の名前、何だっけ?」




俺が訊くと、横になってマンガを読んでいたケンが遊也より先に答えた。




「美月ちゃんだよ」




「そう、美月や」




そうそう…美月っていう名前だった。でも遊也から聞いただけで、遊也の彼女である美月のことは何も知らない。




「蒼おまえ、A組の美月ちゃん知らねぇとか言わないよな?」




まーた始まった…ケンの情報屋。




「遊也から話聞いただけだしな。顔は知らねぇ…ケンは色々知りすぎなんだよ」




「だって長身の美女だぜ?長い茶色の綺麗な髪…手足は細いんだけど、いい具合にイイトコ、肉ついてんだよな〜」




――…バシッ!


遊也はそばにあった雑誌で、ケンの頭を思い切り叩いた。




「美々に言いつけてやろー!ケンが変態やって」




「俺は、美々一筋だから心配すんな。んで、もう…ヤッた?」




「まだや…そんなんちゃうねん」




遊也、手ぇ早そうなのに。




「ふーん…何が違うんだ?…まぁ、おめでとっ!美々にさっき言ったこと絶対に言うなよ?」




ケンは真剣な顔で遊也にお願いする。高梨が聞いたら怒るだろうな。




「アハハ…やっぱり美々が怖いんやなぁ」




遊也と美月は、一週間前から付き合い始めた。




夏休み明けには、遊也を好きな女たちは…みんな泣くことになるだろう。




美月から、遊也に告白したらしい。




そりゃそうだろうな…




遊也が絢音を好きだと言った以来、俺は遊也から、女の話とか聞いたことなかったから。
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