幼なじみ〜first love〜
「絢音…今日は楽しかった……」




観覧車が真上に来た所で、外を見つめていた蒼が、突然呟いた。何で…あたしの顔見てくれないのだろう。




「あたしもだよ…蒼。楽しかった」




蒼の横顔に、あたしは満面の笑顔で答えた。




「絢音……これで最後にしよう…」




灰色の空から


雨が降ってきた




「わ、わかってるよっ…!蒼が出発する前の、最後のデート…」




観覧車の窓に


雨が突き刺さる




「……俺たち……これで最後にしよう」




ようやく、あたしの目を見てくれた。でも、顔色ひとつ変えない蒼が、怖かった。




「…えっ?な、なに…意味わかんないよ…」




まっすぐな瞳が


怖かった




「俺たち…、ただの幼なじみに…戻ろうぜ……」








降りしきる雨が


心にも突き刺さる……―――




冷たくて、悲しくて、痛い。
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