幼なじみ〜first love〜
新幹線に乗り込み、それぞれ皆、大きな鞄を棚に乗せた。
「つーか、何で奈良?」
座席に座るなり、クラスメートの男の子がぽつりと呟く。
「何を今更…」
美々ちゃんが呆れた様子で答えた。
「でもさぁ、俺、中学ん時の修学旅行も奈良と京都だったんだけど…」
「そんなんあたしもだよ」
「あたしも、あたしも〜」
会話を聞いていたクラスメートたちが次々に答える。
「理事長が奈良好きっていう話だぜ?」
窓際の席で足を組むケンちゃんがボソッと答えた。
理事長といえば、遊也。みんなの視線が遊也に集まる。
理事長が、遊也の伯父ということは、クラスのみんなが知っていた。
「なんやね〜ん!俺のせいかいな…。すまんすまん!せやけど奈良、ええとこやで?」
いつもと変わらない明るい遊也の言葉に、みんなが笑う。
ただあたしには、遊也が無理していつも通りにしていることもわかった。
ケンちゃんの方を見ると、遊也には見向きもせず、窓の外の景色を眺めていた。