幼なじみ〜first love〜
列車に乗り込んでから約30分が経った。




蒼は窓側の席に座り、外の景色をずっと眺めている。




あたしの右手を握ったまま…




「絢音の手…暖かいな。眠たい?」




「ううん…っ。眠くないよ?」




謝らなきゃいけないのに…言葉が出て来ない。




蒼は、何もなかったかのようにあたしに接してくれてる。




その優しさに甘えてはいけないのは…わかってる




あたしは、ずっと下を向いていた。




「…父ちゃんの別荘に行くんだ」




「…えっ?あぁ…そぉなの?すごいね、蒼のお父さん。別荘なんて持ってたんだ」




「俺も最近知った。まぁあんだけ働いてんだから、金はあるだろ」




蒼は、苦笑いであたしに言った。




「アメリカ行ってからも、お父さん…家にあんまり…?」




「帰ってくるわけないだろ?」




そう言って蒼はまた、外の景色を眺め始めた。




蒼がアメリカ行ってから、電話もメールもたくさんしていたのに…




蒼は自分が寂しいとか




一切言わなかった




蒼はそうやって一人で抱え込んで




弱音を吐いたりしない




強い人……―――




強い人だって……あたしは勝手に思い込んでたんだ。
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