幼なじみ〜first love〜
「蒼…ごめんね」




絢音が、俺の腕に抱きつく。




「気にすんな。明日になれば熱もきっと下がるよ」




俺は、絢音の頭を撫でた。




「違うの…。あたし、蒼はずっと強い人だって思い込んでた。まだあの頃は小さかったから…いつのまにか忘れてたの…」




「いきなり何言い出すんだよ…熱で頭おかしくなったか?」




絢音のまっすぐな瞳が、俺の視線を離さない。




「…小学校1年生の時、蒼のお母さん体壊して入院したじゃない?」




「…そうだっけか?まぁ母ちゃん昔から体弱かったしな」




本当は


はっきりと覚えている…




小さい頃から




父ちゃんも母ちゃんも




ほとんど家にいなくて




そんな中

母ちゃんが倒れて




母ちゃんが

死んじゃうんじゃないかって…




すごく怖かった




覚えてる……




あの頃の俺は




孤独しかなかったから




「あの時…蒼はね“俺はひとりぼっち”って言ったの。すごく悲しかった。淋しかった…」




あの時、絢音は




こう言ってくれた




「だからあたし、“ひとりぼっちじゃないよ。いつもそばにいる。だから、ふたりぼっちだよ”」




“ふたりぼっちだよ”




あの頃…、


孤独で




いつも感じてた感情




“淋しい”




俺はずっと

ひとりだと思ってた




ひとりで

生きていくんだって




そう思ってた




絢音は

真っ暗で足元の見えない俺に




光をくれた…――
< 575 / 1,010 >

この作品をシェア

pagetop