幼なじみ〜first love〜

絢音―side―

――……ガタン、ゴトン……




心地よい揺れに、身を任せる。




あたしたちは、電車に乗って空港へと向かっていた。




「あのまま、あの別荘に閉じ込められちゃうかと思ったよねっ」




別荘のほとんどの部屋が圏外だったけど、リビングで携帯を思いっきり振ったら、待受画面の電波のマーク3本のうち、1本が奇跡的に……




その瞬間に、タクシー会社に電話した。




「奇跡の電波だったなぁ…まぁあのまま閉じ込められても、俺はよかったぜ?」




蒼の余裕な顔に、一瞬ムカッときた。




「もぉ〜何言ってんのよぉ。食料、もぉなかったのに…飢え死にしちゃうとこだったじゃん」




あたしは、頬を膨らませ蒼を見た。




「ハハハッ…だよな」




「そぉだよぉ〜!」




「――……ふぁぁ〜」




蒼が大きなあくびをして、窓の外を見つめる。




「…………」




「…………」




沈黙が流れた―――……。




「あっ…!蒼、お土産買わなくていいの?」




「空港着いたら…買うよ」




「…えぇ…っと…おばさんって、確か甘いモノ好きだったよね?」




「…あ?あぁ…」




「何がいいかなぁ…美味しいのって何だろうね…」




「絢音…ムリしなくていーよ」




「…ムリなんかしてないよ」




あたしたち…




お互いに




心を隠せないね……――
< 583 / 1,010 >

この作品をシェア

pagetop