幼なじみ〜first love〜
「遊也…どうしてここに…?」




遊也は、Yシャツにネクタイ、仕事帰りらしかった。




腕に持っていたスーツを砂の上に放り、あたしを思い切り抱き締める…――




「おまえが電話、出えへんから…心配したやんか…」




遊也の白いワイシャツは、汗で濡れていた。




心臓の音もすごく速くて…




こんなあたしの為に

必死に走ってきてくれたの…?




「よかった…おまえがここにおって…」




遊也の腕の強さで、あたしは息も出来ないほどに苦しかった。




「遊也…っ」




「あぁ…っ、すまんかった……」




遊也は腕を緩め、あたしをじっと見つめる。




「…あたしが死ぬとでも思った…?」




「………そうや」




「死んだりしないよ……蒼に二度も助けてもらった命なのに……」




蒼が助けてくれたから




今、あたしは生きてて…




「でも…遊也ぁ……蒼はもう…あたしのそばにいないんだよね……ウウッ…ック…」



蒼は助けてくれた時…

あたしに泣きながら言ったんだ




“俺のために生きて”




そう言ってくれた




…蒼……




これから

あたしは誰の為に




生きてくの……―――?
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