幼なじみ〜first love〜
「俺とおまえ…同じやな…」




「同じなんかじゃない!遊也くんは…お父さんがいるじゃないっ…!」




「父親ちゅーても、捨てられたも同然やしな」




「逢いたい時に…逢えるじゃない……!ぜんぜん違うじゃないっ!」




そう泣き叫んだ沙羅は、俺に鞄を投げつけた。




「大好きだった…パパ……逢いたいって思ったって…もう…絶対に逢えない……」




沙羅の悲しみが

どれだけ深いモノなのか




俺には少しだけわかる




家族と呼べる人がいなくなるということ




この世にひとりでいることが




どれだけ

怖くて

寂しくて……




押し潰されそうになるか


俺は知ってる




「大丈夫や……沙羅には蒼がおるやろ?」




「…遊也くんだって…友達ならわかってるはずでしょ…?蒼が沙羅のそばにいるのは責任感じてるからってこと」




「おまえも最初から…わかってたはずや…それでも蒼のそばにおるって決めたんはおまえやろ?辛いなら、やめたらええ」




「そうだよっ…!それでもいいって思った…。だって蒼は…絢音ちゃんを忘れるって言った。2人に何があったかは知らないけど、絢音ちゃんとは結ばれない運命だって…沙羅を好きになるって…言ってくれたから…」




「そうや…蒼が絢音んとこに戻ることは絶対にあらへん」




「…けど…わかるの…。いまの蒼は…迷ってる…。沙羅を捨てて、絢音ちゃんを選ぼうとしてる…」




「そんなはずないって言うてるやろ?」




「でも…沙羅にはわかる。蒼が好きだから…」




蒼が迷ってる…?


そんなわけ…絶対に…




だって


蒼と絢音がどんなに想い合ったって




2人には

幸せな未来などないのだから
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