幼なじみ〜first love〜
吹雪の中、俺は絢音を背負い、近くの山小屋に避難した。


絢音を暖炉の前に寝かせて、置いてあった毛布で絢音の体を覆った。


俺はズボンのポケットに入っていたライターで、紙切れに火を付け、暖炉の中に投げた。火は燃え上がり、すぐに大きくなっていった。




「…絢音…すぐ暖かくなるからな……」




「………ん」




何でもっと早く助けてやれなかったんだろう…


あと少し発見するのが遅かったら…考えただけでも恐ろしい。絢音は凍死寸前だった。




「朝になるまで、ここにいよ」




俺は横になっている絢音のそばに座り、暖炉の火を見つめていた。




「…ねぇ…蒼」




目を瞑ったままの絢音のか細い不安げな声。




「ん…どした?」




「あたし…やっぱりよくわかんないよ」




絢音は横に寝たまま、俺に背を向ける。




「そうだよな。ごめん…勝手なことばっかり。別れるって言ったのは俺なのに…」




「何で…キスなんかしたの?あたしがどんな思いで…」




絢音は言葉に詰まり黙りこんだ。

泣くのを堪えてるんだろうと思う。どれほど泣かせたのかな、俺は。




誰よりも大切だから、愛してるから別れると決めて、でももう二度と会えなくなる恐怖を知った瞬間、抑え込んでいた想いが溢れ出した。




「もしあのまま絢音と会えなかったら、俺は一生後悔するとこだった。俺…もう絢音を失いたくない…」


絢音の震える背中に、俺は話し続けた。


「絢音…俺はずっとおまえのこと想ってたよ…」


忘れたことなんてない


おまえをいつも想ってた


「…そう信じてたよ…あたしだって連絡がなくなっても、蒼に好きな人が出来たって聞いても…何かの間違いだって…」


絢音…ごめんな。


「でも蒼は…あたしを捨てたじゃない…っ」


絢音は俺に背を向けたまま、声を押し殺して涙を流していた。
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