幼なじみ〜first love〜
「…人の気持ちは、しゃーないねん。いくら自分が好きでもな…。想い合えるっちゅーのは、ほんま奇跡や」




遊也くんは、私が苛立ち、投げつけた鞄を拾って呟いた。




「俺もずっと自分の弱さを見て見ぬフリしてきたんや…」




「…沙羅は…蒼がいなきゃ生きてる意味なんてない…」




「蒼の気持ちも、絢音の気持ちもわかってるやろ…?」




「蒼が全てなの…。もう…蒼のいない世界は考えられない……」




何でなの…?



この人に本当の気持ちを話してしまうのは…



そんなに何度も会ったことあるわけじゃないのに。




ずっとずっと、不思議だった




「おまえは…自分のことしか考えてへんよ」




「……やめ…て…」




蒼の前で流した

たくさんの嘘の涙



今…溢れ出る涙は



何なの……?




「幸せになりたいんやったら…まず罪悪感を取り除くんや…」




そう言って彼は、ベッドから立ち上がり、私を優しく抱き寄せた。




「…何?離して…っ!沙羅は、罪悪感なんて感じてないよ」




「…このまま幸せになれるとでも思うてんのか?今は気づいてなくても、すぐに気づくはずや。ずっと罪悪感を感じて生きてくだけの人生や…」




「……そんなのっ」




「蒼を繋ぎ止めたって…幸せなんか見えて来ぃひんよ…一生な」




「……何でも知ったフリしないで……」




「おまえ本当は、そんなヤツちゃうもん…」




彼が本心で言ったのかは

わからない




それでもこの言葉は


私の心の奥に響く




「…そんなの…何で遊也くんにわかるの…?」




「俺と沙羅は…似てるから…」




いつも冷たい瞳で

私を見ていた彼が



穏やかに笑う



溢れ出る涙は、床に落ちてった。
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