幼なじみ〜first love〜
「蒼…、沙羅は…アメリカに行くね……」
手の力を緩め、蒼の首から、ゆっくりと手を離した。
「………ずいぶん…急だな」
右腕で、こぼれる涙を拭った。
「…1週間後には発てるように準備するね…」
「…沙羅がそうしたいなら…俺はついていくよ…」
もう…ムリして
笑わなくていいから
蒼……蒼の手を
離してあげる
「…蒼は…ここに残るんだよ…ここに残って…」
自由にしてあげる
「……何言ってんだよ…?ひとりで暮らすのか…?」
「…そうだよ。パパと暮らしたあの家で…またやり直そうと思って…」
「…どうして?」
「蒼と別れて…ここにいれるほど…沙羅はまだ、強くなれないから…」
「俺は…沙羅のそばにいるって言ったよ」
「あれは…沙羅が言わせただけ…。蒼の本心じゃない」
蒼の前に跪き、私は蒼の両手をギュッと握りしめた。
「…ずっと前から…ううん、はじめからわかってた。蒼の好きな人は、たったひとりだけだってこと…」
はじめから
出逢った頃から
何ひとつ始まることのない恋だってこと
「全部…わかってたのに……」
私のひとりよがりの恋だってこと
「それでも、どんな手を使っても、汚いことしても…蒼を離せなかった。沙羅には…蒼しかいないって思ってたから…」
「…沙羅…もういい…何も言うな…」
「蒼の笑顔も…心も…壊したのは沙羅だよ…そんな瞳にさせたのも…全部……ごめんね…っ……蒼……ごめんなさ…い…っ」
「…沙羅…謝んないで…頼むよ…」
「ごめんね……蒼…っ…」
「…謝らなきゃいけないのは…俺なんだ…」
蒼…泣かないで
もう…
この苦しみから
あなたを
逃がしてあげるからね