幼なじみ〜first love〜
「水嶋さんがそんな人だって全然知りませんでした…」




湯川さんは、胸元をぎゅっと掴んで言った。




「素敵な方だとは思ってましたけど、仕事に対する姿勢もカッコ良くて…だから好きになりました」




「ありがとう…気持ちは嬉しいよ」




「でも浮気相手でもいいって告白して断られたの初めてです…私」




湯川さんは、恥ずかしそうに俯いた。




「浮気しない人もいるよ」




「私の周りには、いなかったんです。みんな浮気するのが普通の人ばかりで…」




湯川さんは、苦笑いで長い髪を耳にかけた。




「湯川さんは美人だし、社内でも本当に人気があるよ?」




「…みんな見た目だけで……。私の中身を好きと言ってくれる人なんかいないです。今まで付き合ってきた人たちもみんなそう…」




「湯川さん…」




美人でも悩みは


あるんだな……




「恥ずかしいです…悲しい恋愛ばかり。今まで私が好きになる人は、彼女がいる人ばかりで…中には結婚していた人もいたりしました…。」




湯川さんは、昔のことを思い出したのか、少し俯き、おでこを手で押さえながら話し始めた。




「平気で2番目の彼女…まぁ浮気相手ですよね、そんな恋愛ばかりしていました。私が好きだから、それでもいいって言い聞かせてましたし、身体を重ねる時は私を見てくれるから」




「…最低な男だな」




「身体だけの関係でも…抱き締められてる間は幸せなんです」




「バカだなぁ…そんな人のそばにいるなんて…」




俺の言葉に、湯川さんは微笑んだ。




「本命の彼女や奥さんに悪いなという気持ちを、ずっと持ちながら…でもいつか自分が一番になれるって言い聞かせて、そばに…」
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