幼なじみ〜first love〜
夕方の電話は美々からだった。
ケンと美々は、3年前くらいから同棲中だ。
駅前のドーナツは、美々の好物で買ってこいと頼まれた。高校の時、元気のない美々に、これでもかってくらいドーナツを買い続けてた絢音のことを思い出して、少し吹きだしてしまった。
仕事が終わってから、ドーナツを買い、ケンと美々が住む家に寄った。
三人そろって逢うのは本当に久しぶりのことだった。
「ありがと~ドーナツ。蒼くんも食べて行くでしょ?」
「いや…」
俺は、絢音に逢いにいくことを話した。
「蒼、やっとだな。がんばれよ」
「ありがとな、ケン…」
「これ、いま絢音が住んでるとこの住所だから」
そう言って美々は、住所の書かれた紙切れを俺に渡す。
「…はっ?あいつ、島にいんの?」
「そうだよ。いまから行って間に合うかな」
「行けるだけ、行ってみるよ。さんきゅ…」
それから家に帰り、荷物を鞄に詰め込んで、俺はその足で駅に向かった。
絢音…
おまえに話したいこと
たくさんあるんだ
だからさ
おまえを迎えに行くよ
やっと逢える
6年もかかってごめん
やっと逢いにいけるんだ
絢音も同じ気持ちでいてくれると、信じてる
何も知らせないで
迎えに行くのは
驚くかな
おまえに逢いたい
早く逢いたい
夜空には三日月が見えていた。