―愛彩―
その人柄に吸い寄せられるのか、長谷川さんの周りには、様々な方がいらっしゃいました。

そんな方たちのおもてなしをするのも、私の仕事になっていました。


――その中には、和人様の姿もありました。


和人様は、身一つで工場の寮に入っていました。
工場の“寮”と言えば聞こえは良いですが、戦後まもなくの頃の事です。
和人様は雑多な環境の中に身を置いておられました。

「苦しい思いもしたけど・・・。俺はこうなっても良かったと思うよ。」

世間の波に揉まれて、和人様は見違えるほどの、精悍な顔つきの青年になっておりました。

元々の端正なお顔立ちに加えて・・・。

「和人様は、たくましくなられました。」

「篠宮の中にいたら、こうはなっていなかったかもしれないよ。」

「和人様は和人様ですよ。」

篠宮の屋敷を出てから一年が経とうとしておりました。
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