―愛彩―
―――数カ月後。

長谷川さんは息を引き取られました。

穏やかな最期でした。

『・・・ありがとう。』

長谷川さんは微かな声で、そう言って下さいました。

私は手を握りながら、長谷川さんの最期を看取りました。

葬儀は、長谷川さんを慕っていた多くの方達が参列していました。

家族がいなかった長谷川さんの葬儀は、和人様が喪主として、立派に取り仕切っておられました。
私も、家事場から何から、様々なお手伝いをさせて頂きました。


長谷川さんの葬儀の翌日。
弁護士だとおっしゃられる方が、長谷川の会社を訪れてきたのです。

「長谷川さんの遺言書を預かっております。」

「遺言書?」

初耳でした。
長谷川さんがそんなものを残しておられたとは・・・。

「こちらです。」

弁護士の方は、白い封筒を私たちの前に差し出されました。

「お二人に開封して頂けるようにと、長谷川さんはおっしゃっておられました。」

戸惑う和人様と私。

和人様が封筒を手に取られ、封を開けられたのです。

中には、三つ折りされた文が2枚、入っておりました。
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