―愛彩―
―――ある日。

長谷川の会社にひとりの女性が訪ねて来られました。

「高沢さんにお会いしたいと言っておられます。」

受付からの電話に、私は一階まで降りて行きました。

『須崎優花』と名乗る女性に私は心あたりがありませんでした。

その女性はロビーのソファーに座り、私を待っていました。

「高沢ですが。」

背後から軽く覗き込むような姿勢で、私は彼女に声をかけたのです。

「お仕事中にお呼びだてして申し訳ありません。」

彼女はソファーから立ち上がり、私の前に立ちました。

20代半ばと思しき彼女は化粧も控え目で、落ち着いた佇まいの女性に見えました。

「須崎優花さんとおっしゃられましたね。」

「はい。」

私は彼女を促すようにソファーに座りました。

「今日はどのようなご用件で?」

彼女は私の問いかけにバッグの中を探り、一枚の写真を差し出したのです。

「この写真に、見覚えはございませんか?」

彼女が私に見せた写真。
それは古い白黒写真でした。

おそらく家の前で撮られた集合写真。

何人かの男女の姿。

私は目を凝らして、その顔を一人ずつ見ていきました。
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