―愛彩―
「・・・!!。」

瞬間、私の心臓が大きく音を立てた気がしました。

彼女にも聞こえたのではないかというくらいの衝動でした。

――白黒写真に写っていたのは、ありし日の篠宮家の方たちだったのです。

篠宮邸の門扉の前で撮られた写真。

使用人だった何人かの姿も確認することができたのです。

少女の頃の私も皆様とともに、カメラに向けて微笑んでいました。

「この写真・・・。なぜあなたが?」

平静を装い、私は彼女に尋ねました。

「母の形見なんです。」

「お母さん?」

「はい。」

すると彼女は私の手元に指を伸ばし、ひとりの女性を指差して言いました。

「ここに写っているのが私の母です。」

彼女が指差した女性。


それは由里様でした。


再び、私の胸は強く締め付けられました。

「由里様のお嬢様?」

私は彼女の顔を、思わず凝視していました。

無意識のうちに、由里様の面影を探そうとしていたのです。
< 31 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop