―愛彩―
彼女は遠慮がちに微笑んでいました。

はっきりとした二重。
淡い色の唇は、由里様ゆずりなのか・・・。

彼女は派手ではないけれど、楚々とした女性でした。

漂う空気は、確かに由里様に似ておいででした。

「篠宮のお屋敷の前で撮られた写真です。」

私は彼女に写真を返しました。

「高沢さんも、この中にいらっしゃいますよね?」

「ええ。」

「今、お会いして判りました。」

彼女は写真を見ていました。

「左はじに写っている女の子。」

「はい。それが私です。」

みつあみをし、篠宮のメイドの服を着ていた頃の、幼い私の姿でした。

「由里様にお嬢様がいたとは、知らなかったものですから」

私は彼女に軽く、頭を下げました。

「私を産んで、すぐに亡くなったみたいです。」

彼女は写真を、バッグにしまいながら答えていました。

「肺を患われて、亡くなられたと聞いています。」

「そうみたいです。覚えてはいないんですけど。」

「須崎さんとおっしゃられましたが・・・。」

私が覚えている由里様の嫁ぎ先は、別の苗字の家でした。
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