―愛彩―
須崎さんが訪ねて来られた、その日の夜。

私は出先から戻られた和人様に、彼女の事を話しました。

「姉さんに娘?」

和人様はにわかには信じ難いと、大変戸惑われておいででした。

和人様ですら、ご存知ではなかったのです。

「お会いになられますか?」

「会ってみたいね。私の姪にあたるわけだから。」

和人様の表情からは、戸惑いの中の喜びを感じ取ることができました。

無理もありません。

和人様にとって血縁にある方々とは、音信不通の状態が続いていたのですから。

なによりも、由里様の娘。

和人様の中で、幼い頃の「想い」が沸き立っていたとしても、仕方のないこと。

その由里様の娘に会うということは、和人様にとってみれば、言わば初恋との再会。



―――この時、私は初めて由里様に「嫉妬」のような感情を覚えたのです。

それは、小さな渦でありました。
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