―愛彩―

かの方の言葉。

年の瀬が、さし迫った冬のこと。

何の前触れもなく、その日は突然やってきました。


和人様はご自宅で倒れられたのです。


「和人様！！」


私は和人様の傍にかけ寄り、すぐに救急車を呼ぶように伝えました。


和人様は、救命センターに運び込まれ、すぐさま手術を受けられる事になりました。

私は気が気でありませんでした。

遅れて駆けつけた優花さんは、私の身体を心配して、

「あとは私が残ります。」

気遣いをしてくれましたが、私はそのまま病院に残りました。


二晩を明かした後、和人様は病室に移されました。


手術は成功し、とりあえずの危機は脱しましたと、担当の先生から説明を受けました。


とりあえずの危機・・・。


意識もはっきりし、本調子ではなくとも、和人様は悪態をついておいででした。

「死んだと思ったか？」

「とんでもございません。」

「でも違ったよ・・・。」

和人様は軽く、目を閉じられました。

「みちるさんが見えたからな。」


それは小さな呟きでした。

その言葉に、私の心は不謹慎にも震えたのです。


和人様の言葉に・・・。
< 47 / 53 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop