―愛彩―
「みちるさん・・・。」

「はい。」

「私も幸せに思うよ・・・。みちるさんと過ごせたことを・・・。」

和人様のお声が、だんだんと弱っていくのが分かりました。

「和人様!!」

私は、再び力を込めました。

和人様は絞り出すように、私に言って下さいました。

「ありがとう・・・。みちるさん・・・。」


最期に振れた唇。
和人様はまぶたを閉じておられました。



病室には、心拍数の異常を示す機械の音が鳴り響いておりました。

すぐに看護士さん達が駆けつけてくれましたが、私にはもう、和人様は戻ってはこられないと・・・。

和人様は逝ってしまわれたと・・・。


そう感じました。


『ありがとう・・・みちるさん。』


和人様の最期の言葉。


私は充分でした。

和人様が私に、感謝の言葉を下さったこと。

最期の時まで、共に居ることができたこと。


私の頬を涙がつたっておりました。

この涙は昔、長谷川さんが亡くなられた時と同じような・・・。

最期を看取った者としての、再びの悲しみのようにも感じられたのでございます。
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