―愛彩―
ところが、まだ先だと言っておられた由里様の結婚は、そのわずか半年後に決まったのです。

急な事でした。
それは、旦那様がお決めになられた事でした。

「由里様は、お幸せなのでしょうか?」

私はある時、由里様にお尋ね申し上げました。

「それは、私の心掛け次第なのでしょうね。」

由里様は微笑んでおられました。

「言われるままに、嫁ぐ身です。私は私なりに、向こうの家で生きていくだけです。」

由里様の言葉に、私は潔さを感じました。

凛とした、強い意志。
けれども柔らかな微笑み。

私は由里様の幸せを心から願わずにはおられませんでした。

由里様は婚儀が行われる朝、私にこうおっしゃられました。

「みちるさん。貴女にもいずれ、一生を共に歩む男性が現れます。」

私は由里様のおっしゃる事をただ、黙って聞いていました。

「私は彼と、共に生きていて良かったと・・・、そう喜びあえる家庭を築きたいと思っています。」

白無垢姿の由里様は、とても輝いておいででした。
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