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「とりあえず鼻水拭け」

いつの間に用意したのか、先生はあたしの鼻にティッシュを押しつける。


「はい、チーン」


「ズズッ、ヂーン………って先生!!」


は、恥ずかしい!

まじで鼻かんじゃったし!


先生は肩を震わせ、声を押し殺して笑っている。


ムード台無し…。


「もぅ…、先生のバカ~」


「くくく…ごめんごめん。ほんとお前って素直っつーか…バカだよなぁ…」

先生は目を細めて、あたしの髪を優しく撫でながら言った。



あたしは、バカって言われたことに反論しようとしたけどできなかった。



あたしを見る先生の目があまりに優しくて…。

あたしの髪を愛しそうに撫でる先生の手がすごく心地よくて…。




「先生…大好きです」


今まで何度言ったかわからない言葉を先生に伝える。

何度言っても、また伝えたくなる。

何度言っても足りない。




そう言ったあたしを先生は優しく抱き寄せ、「俺も」と耳元で囁き、包み込むように抱き締めてくれた。


あたしは初めて“本当の両想い”の幸せを噛みしめた。


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