三澤斗春と優しい殺意。
「んで、何がしたかったのかなお前は?」
やっとこさ大通りに出た時、三澤が尋ねた。
「……あのシチューには薬物が少量ですが入っていました。おそらく、毒です。毎日、知らないうちに少しずつ摂取させて、そのままお婆さんを殺す気です!」
三澤は長倉の熱の入った口調に、少し呆れてポケットから、プラスチックの試験官を取り出した。
「………なら、調べてみるか?」
「いつの間に……」
三澤は、小さな試験官を指で弄ぶ。
「片付けるのを手伝うフリをして、一部採取しておいた」
……その為に、あの騒ぎを演じたのか。
この人には時々脱帽させられる。
本当に時々だけど。
「大学の研究機関に知り合いがいるから調べてもらってこい。それで、満足するなら」
「証拠さえあれば、立証なんて簡単ですからね」
「そう、うまくいくかな?あんな優しい目をした人はそうそういないぞ」
三澤は薫を思い出して、言った。
「確かに、優しそうな目をしていましたけど……それとこれとは話が別です!」
「どうだか……」
三澤は空を仰いだ。
飛行機雲が斜めに走っていた。