被害妄想彼氏
「ここからは、俺の記憶や。アイツとは小学生の頃からずっと一緒やったからな」


そんなこんなで、修司は小学生になった。


「今日は、自分の名前を漢字で書いてみましょう」


先生がそう言い、修司はノートに書き始めた。


「あら、修司くん。凄いのねえ。スラスラと…………え?」


先生は目が点になっていた。
修司は自分の名前を書く欄に、『大林 元雄』と書いていた。


「しゅ、修司くん。自分の名前を書きましょうね」


先生がそう言ったが、修司はこう言った。


「せんせい、これはボクの『ぎめい』なんだ」


「…偽名?」


先生はあっけにとられていた。


「うん、おとうさんが『ほんとうの名前はいざというときまで使うな!お前に偽名をあたえてやる!!』って…」


(…いや、学校の皆、アンタの本名知ってるから。)


先生は、そう思ったらしい。


司は変わり者だったので、『いじめ』の対象になった。


「おまえ、わけわかんねえこといってんじゃねーよー」


ガキ大将が修司の頭を叩いた。
修司も、『自分はいじめられている』と察知した。


「おまえアタマおかしいんじゃねえのー」


ガキ大将の子分らしき子が言った。


「なにだまってんだよー」


修司は口をひらいた。


「…カネか?」


「…は?」


修司の言葉にガキ大将とその子分はハモって言った。


「とぼけるな!カネをもらってるんだろう!どこだれからだ!いってみろ!」


「え?」


ガキ大将と子分は『なにコイツ』と思った。


修司は延々と喋っていた。
その日の前日、修司の父親が修司を、売るという話が出たらしい。


修司は見るものすべてにおびえていた。


(なんかそんな歌あったなあ)
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