被害妄想彼氏
修司を売るという話は、なくなったらしいが修司は人を信じられなくなっていた。


そんな修司も小学校六年生になった。
修司はこの頃から、女の子にモテた。


顔立ちが良かったせいか…修司のわけ分からん被害妄想にも皆慣れてしまったのだろう。


「修司くん、好きです!」


修司は生まれて初めて『好きだ』と言われた。
修司は嬉しかったが……。


『疑ってかかれ!!』父の言葉が頭によぎった。


「…そうか。俺の財産が目当てか!」


修司はとりあえず疑ってかかった。


(いつものことだもんね。慣れた)


女の子は冷静だった。


「修司くん。人を疑うのはよくないよ。疑うより、信じなきゃ。修司くんだって人に疑われたりするのは嫌でしょう?」


「………信じる…」


修司は人を信じたことがない。


「分かった。信じてみる」


修司は決意した。人を信じよう、と。


………………が。
その女の子は中学に入った途端、他の男の子が好きになったので『別れてほしい』と言い出した。


修司はまた、人を信じられなくなった。


そんな修司と話すようになったのは中学三年生のとき。
修学旅行で泊まったホテルでのこと…


「皆、起きてるか?」


就寝時間はとっくに過ぎていた。


部屋には6人。全員起きている。修司も同じ部屋だった。


「なあ、お前ら童貞いつ捨てた?」


誰かがそんな話をし始めた。


「『いつ』ってナンだよ。まだ捨てれてねえっての」


「はは、実は俺もまだ。」


いいだしっぺのやつもまだだった。
でもこの部屋のなかで一人だけ、童貞じゃないやつがいた。
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