大切な時間
 見えない何かが私を縛り付けている間、私はいつも小学校の時の事を思い出していた。

『アキ、なんで受験した事教えてくれなかったの』
『中学変わって引っ越しもしちゃうなんて寂しすぎるよ』
 あの時の自分は受験をするだなんて恥ずかしくて言えなくて、友達に内緒で受験した。それと同時に新しい学校の近くに引っ越しも決まっていた。
 友達皆にかなり責められたのを覚えている。同じ制服を着て彼氏を作って、また楽しく学校行こうって約束していたのだから。ただあの時は引っ越してもいつでも皆に逢えると思ってたから。でも実際逢ったのは二、三回。友情ってこんなものなのかと思った。

 高二の冬にいきなりその子達の内の一人から携帯にメールが来た。

「ねぇ、同窓会するんだけど来ない?」

 自分が忘れられてない事が嬉しかったし、何より小学校の頃に戻れる気がしてすぐにメールを返した。そしてもう1つの目的は、幼稚園の頃から同じマンションに住んでいた幼なじみの太一だった。特別仲のいい幼なじみというわけではなかったけど、いつも一緒に登下校してて、家族ぐるみでよく遊びに行っていた。
 何より、私は小学校の時太一の事が好きだったから。今も好きかと聞かれたらすぐに頷くことはできないけど、あの時の思い出はいつも私を一瞬だけ輝かせてくれるような気がした。

 …しかしその日太一は来なかった。同窓会で配られた手作りのパンフレットのようなものには全員の学校やコメント、アドレスが載っていた。来なかったけど参加するはずだった太一の分も載っていて、
「みんなにまた逢いたい!愛してるよみんなぁぁぁ」
 なんて太一らしいふざけた事が書かれていて思わず笑った。
 一瞬アドレスに目が行ったけど、五年ぶりにいきなり人伝手でメールを送るなんて私の性格が許さなくてすぐに目を離した。
 その次に私の目にとまったのは学校だった。ある日ふとそれを思い出してインターネットでその学校を調べた。何が出るかもわからなかったし、第一学校のページを見ても生徒の情報なんてないってわかっていたけど、でも何か太一に関することが知りたかった。それほど私は過去というものに執着していたのかもしれない。
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