大切な時間
 適当に空いている場所を見付け二人で座る。オレはアキの方に向き直る。

「…あのさ、率直に言うけど、オレアキのこと好きなんだ」

 好きだと思ったら、不器用なオレには駆け引きとかそういうことはできなくて一直進に進むことしかできない。好きだって気持ちをただ伝えてしまう。

「え!?」
 返事はアキのびっくりするくらい大きな声だった。まわりに座ってる人がちらちら見てきたけど、アキは全然気にしてなかったみたいだった。というか見てなかった。

「…ごめん」
 次にアキからはそう返って来た。

「いや、いいんだよ。昨日会ったんだもんな…」
 断られるとは当たり前だ。それはわかっているのに内心相当へこんでいるオレがいる。

「アキ、あのさ…へ?」
 すでに隣にはもうアキはおらず、後ろに振り返ったらアキが走っていくところだった。

 追い掛けたかったけど、芝生が接着剤みたいにオレを地面にくっつけていて離れなかった。オレが傷ついたこと、それよりもアキを困らせていることに気づく。

 しばらくしてやっぱり心配になって河原の側をウロウロして始めた。
 オレは嫌われただろうか?アキとの関係が崩れたかもしれない。
 
「晃太!」
 と呼ばれて振り向くと、アキと太一が歩いてきていた。アキは笑っている。
 二人で何をしていたんだろう…と一瞬疑問には思ったが、俺は笑って手を振った。

 ドーン

 そこでやっと花火が始まった。オレたちはその大きく咲き誇る一瞬の華をいつまでも見ていた。
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