大切な時間
《太一》
9月になってからは大分忙しくなった。生徒会の最後の大きな一仕事は文化祭だった。
うちの学校は実行委員の活動が薄いため、生徒会が運営を半分受け持っている。
しかも俺は会長。人一倍仕事も多い。生徒会の普段の仕事+文化祭の仕事で毎日夜遅くまで残っていた。
家から学校は遠く、片道1時間掛かるから家に着くのは毎日かなり遅い時間だった。

携帯を見てメールは3通、1通は男から、1通は女の子から、残り1通は迷惑メール。
アキからは来てないか…。

俺の思考能力は一気に衰え、俺はベッドに倒れこむ。
2人にちゃんと返事を送り、さらにその返事にもまめに返信する。
高校生になってからは自分が出せない気がする。
この前の花火大会ではっきりわかった。アキが俺を解放してくれた気がする。
いつからこんなに人に気を使うようになったのかなぁ…。

メールを受信するたびに俺は期待をしてメールを開く。しかし今回もやはりアキからではなかった。
さっきメールをしていた女の子の佐々木さんからだった。

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from:佐々木礼美
subject:お疲れ
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太一クン明日も生徒会なん
だ大変だね;;
ねぇ、息抜きに遊びに行
こうよ♪
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…誘われたら断れない俺は
「いいよ♪」
なんて返事をしてしまった。好きでもない子なのに、断るのがかわいそうな気がしたから。

前の彼女と別れてから女の子からのメールが増えた。こんな俺のどこがいいのだろう。皆が好きなのは偽物の俺なのに。

本当の俺でも皆の反応は一緒なのだろうか?前の彼女も本当の俺を知って嫌になったんだった。
アキなら…いや、アキは幼なじみだ。アキには晃太みたいな奴の方が合っている。


俺は佐々木さんと待ち合わせをして眠りについた。
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