大切な時間
 私は今、太一の高校のホームページなんかを見ている。私が第三者なら私は私を「気持ち悪い」と言って一歩引いて見ているだろう。そんな自分に呆れながらも別の部分では何かを求めながら画面を見つめる。
 生徒会を紹介しているページを見ると、生徒会長という字の下に“樋村太一”という字を見つけた。私の心臓が一瞬どきっとする。さらにその下には生徒会長の写真があった。

「あ…」

 かなり大人っぽくなっていたけどすぐにわかった。その写真は太一だった。探しておきながら矛盾しているけれど、まさか見つかるとは思っていなかった。私の心臓はさらに鼓動を打つ。

 だって、太一は昔と変わらない笑顔でいたから。

 それからは何をするわけでもなく、現実に戻った。毎日学校に行って、あっという間に三年生になった。進路について考えすぎて、頭に虫が入ってきたみたいに痛くて、脳みそを食べられたのかなと思うくらい何も考えられなくなった。
 それで結局今に至るわけである。考えるのに疲れてまた楽な方向に行こうとしている。

 テレビを見て高校生の輝きに目が耐えられずスイッチを切る。
 また苦しくなってきた。縛り付けられる。

 『え…アキ、私立に行っちゃうの?』
 引っ越しの当日まで太一には言えなかった。そしてやっと言った時に太一は寂しそうな顔をしてこう言ってくれた。だけど私にはもう決められた道筋を変えることなんてできなくて、笑ってお別れを言った。あの時私が太一と同じ地元の中学校に行っていたら…?

 私はもう少し素直だったかな?

 高校三年生になってまで小学校の時の思い出を引きずるのはばかばかしいかな?

 太一ならこんな私になんて言ってくれるかな?


 …太一に逢いたい。
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