大切な時間
 私は性格を隠しすぎていたと思う。
 先生や友達の前では明るく振る舞って、
 「アキちゃんは本当にいい子だね」
 って言われる度自分のスキルが上がって行くような気がしていい子を演じ続けた。だけど皆は分かってる。
 「アキって自分のこと話さないよね」
 自分の弱みは決して見せつけたくなかった。“いい子”だとそう言われていればよくて自分の内は一切さらけ出さなかった。だけど本当はすごく単純だしすぐ怒る。感情を表に出さない割に起伏は激しいからその分、ストレスが溜りやすい。
 こんなでも一応学校は楽しいし、友達だってたくさんいるけど、毎日が同じなのがつまらなかった。一時期彼氏ができれば変わるかなと思ったけど、結局お互い疑いあったりして続かなかった。
 まわりに気を遣うのにもう疲れてて、いつも楽しかった頃を思い出しては現実逃避をしていた。

 刺激が欲しい。

 こんなくだらない考えだったのかもしれない。


 それからの私は自分でもびっくりするくらい行動的だった。ゴムの切れたパジャマを脱ぎ捨て、長い間腕を通していなかったシャツを着て、ジーパンを履いて、素早くメイクをして飛び出した。

途中ポチの散歩をしてないことに気が付いたけど、私の足は止まらなかった。
バスに飛び乗って、バスの遅さにイライラしたけど、だんだん懐かしい風景が見えてきて一瞬ためらった。
私何してるんだろう。何処に行こうとしてるんだろう。

やがてバスは目的地の終点に到着してドアが開いた。

プシューー
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