女子高生夏希のイケメン観察記
奏さんはゴミでも追い払ったかのように両手をぱんぱんと払いながら店の中に入ってくる。
そして、にこりと笑った。
「なっちゃん、店の方はあらかた片付いたし、そろそろ智を起こして行ってきたら?」
そう。
智さんは、十日間の無理がたたっているのか、まだ眠っている。
「で、でも。
いいです。
智さんが起きるまで、私、待ってます」
奏さんは不意に笑顔を引っ込めて、私の頭を抱き寄せた。
……え?
「何から逃げてるのか知らないけどさ。
そういう時は、ちゃんと言葉にしてみればいいのに。
得体の知れないものからは逃げ切れないし、対処もできないけれど。具体的なものには立ち向かえるし、戦える。
こう見えても結構、頼りになるほうだと思うよ、僕たち」
静かな声が、優しく、耳元で響いた。
「……私……」
思わず我慢していた気持ちがこぼれそうになる。
思わず顔をあげれば、至近距離に奏さんの鳶色の瞳。
優しく揺らめいて、無言のままに語っている。
分けてくれていいんだよ、なっちゃん、って。
「伊達さんが言ったことを信じたくないの。
否定したいの。
だから、その証拠を探しに行くんです」
気づけばぎゅっと拳を握り締めていた。
その中には私の願いがたくさんたくさん、詰まっている。
そして、にこりと笑った。
「なっちゃん、店の方はあらかた片付いたし、そろそろ智を起こして行ってきたら?」
そう。
智さんは、十日間の無理がたたっているのか、まだ眠っている。
「で、でも。
いいです。
智さんが起きるまで、私、待ってます」
奏さんは不意に笑顔を引っ込めて、私の頭を抱き寄せた。
……え?
「何から逃げてるのか知らないけどさ。
そういう時は、ちゃんと言葉にしてみればいいのに。
得体の知れないものからは逃げ切れないし、対処もできないけれど。具体的なものには立ち向かえるし、戦える。
こう見えても結構、頼りになるほうだと思うよ、僕たち」
静かな声が、優しく、耳元で響いた。
「……私……」
思わず我慢していた気持ちがこぼれそうになる。
思わず顔をあげれば、至近距離に奏さんの鳶色の瞳。
優しく揺らめいて、無言のままに語っている。
分けてくれていいんだよ、なっちゃん、って。
「伊達さんが言ったことを信じたくないの。
否定したいの。
だから、その証拠を探しに行くんです」
気づけばぎゅっと拳を握り締めていた。
その中には私の願いがたくさんたくさん、詰まっている。