女子高生夏希のイケメン観察記
「奏ー、そろそろ……」

店の奥から智さんが顔を出した。
抱き合っている私たちを、きっと智さんは目の当たりにしているに違いない。

ご、誤解ですっ。

そういいたいと思えば思うほど、心拍数と体温が上がっていく。

奏さんが一瞬、楽しそうにくすりと唇を歪め、私の顎に指をかけるとその綺麗な顔を近づけてきた。
私はそれにつられるように顔を後ろに下げる他ない。

だって、じゃなきゃぶつかっちゃうよ……?

「……そ、奏さん?」

冗談なのか本気なのか。
まるで見えないその仕草に、私は抗議とも戸惑いともつかない声を上げて抵抗する。

「なぁに? なっちゃん」

艶やかな声に、甘みが増す。

「お客さん、来ますよ?」

「別に、いいんじゃないかな?」

「よよよ、良くないですっ」

っていうか、それじゃ、久遠さんよりタチ悪いじゃないですかっ。
私は身体ごと後ずさる。
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