女子高生夏希のイケメン観察記
「千崎さん。
 落ち着いてくださいっ」

医師が慌てて駆け込んできた。

「大内の手先が、もうそこまで来ているのです。
 どうぞ、お気をつけ下さいっ」

張り上げた母の声が悲痛に響く。


それから先は、まるでドラマをみているかのようで。
我に返ったときはもう、車の助手席に乗り込んでいた。

『時代劇がお好きだったんですか?
 時折、ああなられるんですよね』

医師の言葉が耳の奥にこびりついて、離れない。

時代劇が好きだった……?

そうかもしれない。
でも、それだけじゃ、ない気がする。


智さんを見た瞬間に、母は床に突っ伏したのだから。

智さんは手を伸ばして、私の頭を撫でている。
優しい沈黙が、車内に満ちていた。

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