女子高生夏希のイケメン観察記
でもでも。

チャンスはピンチ、じゃなかった。
ピンチはチャンス、だったっけ?

何はともあれ、これを逃す手はない、と。
私は真っ直ぐに店長の瞳を見据えた。

「私も今日のテレビ見たんですけど。
 あの。
 和服のすっごく素敵な人が、ちらりと映ってたんですっ。
 是非とも、真壁店長に教えてもらいたいと思って!」

緊張のあまり、喉がからからになる。
だって、一見のお客さんで店長の知らない人かもしれないし。

ふわり、と。
店長は柔らかい笑みを浮かべた。

「あら、なっちゃん。
 真壁店長、なんて他人行儀な呼び方辞めてよ。奏でいいよ、僕そういう他人行儀なの苦手だし。
 ところで、智(とも)もテレビに映っちゃってたんだねー」

智?
さっきの電話でもそんな名前が出てたっけ。

「奥に居ると思うから。
 逢ってきたら」

……え?

「ここに、住んでらっしゃるんですか?」

緊張のあまり声が裏返る。
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