女子高生夏希のイケメン観察記
「そうだよ。
 だって、智って一人じゃ何もできないんだもん。
 危なっかしくて放っておけないじゃない?」

無邪気な笑みを浮かべて、店長が言う。

……こ、これはもしや。

禁断のご関係ですか? なんて聞くわけにもいかないし。

「それに、久遠から目を離すなって言われてるしさ。
 あ、茶室の準備しとかなきゃ」

迷っている間に、店長は私の存在など忘れたかのように奥へと行ってしまった。
私は慌てて後を追う。

そうして足を進めながら、花屋の狭さに比べて、なんて奥行きのある家なのかしら、と感心してしまった。

洋風な造りである花屋に比べ、金持ちの旧家を思わせるようなしっかりした内装だ。
イグサと木の香りに癒される。

至る所に、いけばなを思わせるような趣で綺麗な花が飾ってある。
その繊細さとセンスの良さは、花に興味皆無の素人の私の足さえも止めてしまうような魅力があった。

……と。
廊下の突き当りから、歩いてくる人影に足を止める。

だって。
テレビで見た、あの、着物姿なんだものっ。


ドキ、ドキ、と心臓が高鳴って、なんとなく視線を下に向けてしまう――。
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