女子高生夏希のイケメン観察記
先に足を止めたのは彼の方だった。
私も思わず足を止める。
着物についての造詣など持ち合わせてないので、描写のしようがないけれど、茶色をベースにした光沢のある和服は、私に<侍>というよりは<将軍>を想像させるような素敵なものだった。

ゆるゆると視線をあげていけば、その、綺麗な顔へと辿り着く。

身長は、店長より少し高い――183センチくらい?
きりりとした眉と、切れ長の瞳が印象的。
短めの黒髪、漆黒の闇をそのまま閉じ込めたようなどこまでも黒い瞳。
定規でも当てたような真っ直ぐな鼻筋に、強い意志を忍ばせる紅い唇。
がしりとした身体つきは鍛えてあげられたもののように見えた。

そう。店長は笑顔の似合う草食形男子というならば。
この方は、武将系日本男児なのだ。

そして、私のストライクゾーンのど真ん中に位置されてらっしゃる。

うん。
テレビで見るよりも、さらに素敵じゃない~?



なんて、思っていたら。
随分と長い間、彼の顔をしげしげと眺めてしまうことになってしまって。

ふと気づいた私は、ふいに狼狽してしまう。



「あの」

「なんだ? 迷ったのか?」

その低い声を発するとき、彼はその形の良い顔を気軽に崩し、思いがけず甘い笑みを浮かべたので、私の心臓はドキリと跳ねる。
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