女子高生夏希のイケメン観察記
「そりゃそうだけどさ」

唇を尖らせる店長を、視線だけで黙らせる。

「俺が紅茶をいれてやってるんだから、黙って座って待ってろ。
 礼儀しらずが」

ぼそりと呟くその台詞が、限りなく高圧的で怖ろしい。

「あのねー、久遠。
 礼儀しらずって言うけどさぁ。
 そもそも、イギリスで紅茶を飲んだとき、その入れ方があまりにも適当で腹が立つってわざわざ国際電話を掛けてきたのはどこのどなたでしたっけ?」

店長はどうやら反撃に出る模様。

「はん。
 そんな昔のことは忘れたな」

久遠さんは、その一言で、あっさり勝負を投げやった。
なんとなく敗北気分に陥ったのか、店長は諦めてテーブルに着く。

そっか。
こういうこともあるから、このテーブルやたらと広いんだ。

だって、8人掛けだもの。

「なっちゃんはこっちに座って」

立ち尽くしている私に、店長は自分の隣を指してくれた。
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