女子高生夏希のイケメン観察記
「智のことは、ほら。
 じきに分かるって、ねぇ?」

奏さんの目が、怪しいほどに泳いでいる。

話を振られた智さんは、困惑顔で首を傾げた。
や、やばい。
その仕草はその仕草で、きゅんとするほど可愛いんですけどっ。

何、その二面性っ。

「まぁ、本人がまだ無自覚なんだから無理だよな」

「無自覚って何のこと?」

尋ねる智さんの口調は、私と先程交わした口調とは異なり、随分と柔らかいものだったのでびっくりした。

「自覚が無いってこと」

久遠さんが低い声で言い捨てる。

「そのくらい知ってるよ!
 久遠って絶対俺のことバカにしてるよね。
 刀作り以外にこれといった才能がないって思ってるだろ?」

唇を尖らせる智さんは、もはや最初に見た人とは別人に見えた。


……何、これ?

胸に一滴、墨汁のような違和感が垂れていく。
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