女子高生夏希のイケメン観察記
5.愛しの君は「戦国武将」
「お帰り、なっちゃん」

家についた私を、蕩けそうに甘い笑顔で迎えてくれたのは奏さん。

「あっちの部屋空けておいたから、好きに使ってねー。
 お客様用の布団もおろしてあるから、使っちゃって。
 お風呂はあっちで、キッチンは……さっき行ったから分かるよね?
 これ、見取り図」

手馴れた不動産業者の人のようにてきぱきと説明してくれる。

「……背中に羽根が生えてるな、お前」

その不自然さと言ったら。
ぼそりと、久遠さんが呟くほどだ。

「で、あの。
 智さんはどちらに……?」

それを聞いた途端。
分かりやすいほど、奏さんの目が泳いだ。

「と、智?
 ああ、ちょぉっと散歩に出てるんじゃないかなぁ」

嘘ですよね?
突然、声が裏返ってらっしゃいますけど?

「じゃ、俺はそろそろボロアパートに帰りま……」

奏さんのシャツを引っ張って止めてくれたのは久遠さんだった。

「いっくらなんでもそれは酷いだろ。
 俺がいくら極悪非道でも、そこまではできねぇな」

……えーっと。
  とりあえず、久遠さんも極悪非道って言う自覚だけはあるんですね?
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