女子高生夏希のイケメン観察記
「あ、目からハートマーク出している人、始めてみた」

奏さんが余計なことをぼそりと呟く。

久遠さんは茶の道具を丁寧に片付け終わると、
「奏の言うことを聞いて、しっかり働け」
なんていう余計な一言をくれると、さっさと帰っていった。

……私の雇い主って、奏さんじゃなくて久遠さんなのかしら。

私は諦めて奏さんに視線を向けた。

「とりあえず、10時から花がなくなるまで店に出てくれればいいよ。
 僕は花の仕入れや別店舗のスタッフとの打ち合わせがあるけど、9時には帰ってる予定だから」

……ええ、花屋さんって手広くやってるのね。
  知らなかったわ。

「智はどうするの?」

「今夜は帰るつもりだけど」

「それは良かった。なっちゃんを連れて帰ってあげてよね。
 僕、自分のアパートに帰るからさ。
 冷蔵庫の中にあるもの、好きに使っちゃっていいから。
 じゃ」

……じゃっ、って。

目を丸くしている私を余所に、奏さんはあっさり帰っていった。


ええと?
私、人里離れた山の中、智さんと二人っきりぃ~?
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