女子高生夏希のイケメン観察記
「なっちゃん~、手が止まってるよ」

帳簿を眺めていた奏さんが顔をあげると、花用のプレートを作っていた私にクレームをつけてくる。

「……もう、疲れました。
 たまにはお休みとか、くれてもいいと思いません?」

だいたい、今日は店休日なのに。
私はどうして、ダイニングテーブルで、プレート作りを強要されているのかしら。

「あのね、なっちゃん。
 こういう時に準備しておくかどうかで、明日からの売上が変わってくるんだから」

口調は穏やかだけど、その瞳は静かに燃えている。

私、気づいたんだけど。
奏さんは相当お金に困っている。

売上高にはものすごくシビア。
売れない筋の花なんて絶対に仕入れないし。
仕入れた花は、まず間違えなく売る。

仮に売れ残っても、綺麗に活けて(奏さんの花を活けるセンスって、本当に絶品なの!スマートでスタイリッシュで、それでいて和の心を忘れてないというか。とにかく、どれだけ小さくても奏さんが活けた花は絶対に人目を引くの)、商品に化けさせる。

無駄が無い仕事をしているなって気づくまでにそう時間はかからなかった。


包装紙一枚でも、包み損ねると怒るし~~~。
そぉんなにものすっごい損失じゃないと思うんですけどねぇ。


包装紙、一枚。
< 66 / 163 >

この作品をシェア

pagetop