女子高生夏希のイケメン観察記
いや、だって。
ママなんていわれているけど、彼。
動かず喋らなかったら、普通にサラリーマンしてそうな、顔の整っている男性なのに。

なんだか、複雑な気分だわ。

「今日は何にする~?」

声も別に、裏声を作っているわけではない。
ただ、喋り方に女性をそこはかとなく感じるだけで。

「ママのお薦めで」

「あっら~。
 いっつも久遠ちゃんは私の難易度を上げていくんだから、いやぁね。
 そうねー、じゃあこの辺りにしようかしら」


ちょっと待ってて、と。
にこやかに言うと、ママ、と呼ばれる喫茶店のマスターはカウンターの向こうへ入っていった。

しばらくして、ジノリの器に入れられた紅茶が来る。
それは確かに絶品で、ものすごく美味しかった、けれど。

この紅茶一杯千円もするんだって。
信じられる?

この辺の土地代が銀座並みに高いってわけじゃないのよ、決して。


……ああ、頭がくらくらしちゃう。
  何かが間違っているような気がしてならないわー。
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