女子高生夏希のイケメン観察記
8.家の周りは「大惨事」
奏さんのワゴンに乗って、以前通った道を登っていく。
車内に満ちる緊張感に、飲み込まれていく。

気づけば、手のひらがじっとり汗ばんでいた。

「あの、どうしたんですか?」

つい先ほど、高級紅茶で存分に潤した喉も、既にからからに乾いていた。

「どうもしてないといいけどな」

答えたのは、助手席に座る久遠さん。
口調が冷たいのは、緊張のせいか生来のものか。

それとも皮肉なのか。


気づけば痛いほどに手を握り締めていた。

バックミラー越しに奏さんと視線が絡む。
奏さんの鳶色の瞳が、ふわりと笑いかけてくれた。

「なっちゃんのせいじゃないよ」

でも、その声は若干強張っている。

……何が起こってるの、一体。

得体の知れない不安が、黒い染みのように心の中に広がっていく。


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