女子高生夏希のイケメン観察記
「夏希ちゃん」

それからしばらくたった後、私に声を掛けてきたのは智さんだった。
すっかり落ち着いた声になっている。

私はゆっくり振り返る。

「もう、落ち着きました?」

「ああ、お陰で。
 なんか、随分心配かけたみたいで悪かったね」

伊達さんモードのときとは違って、同じ顔なのに智さんになるとそれはもう緩やかで甘い笑顔になるから不思議。

「いいえ、その」

「こんなところに突っ立ってたら、日に焼けちゃうよ?」

「……はい」

自然と背中に回される手に、ドキドキする。

「刀、俺がしまおうか?」

「い、いえ、いいですっ」

だって刀を手にすると、トランスしちゃうんでしょう?
そんなまずいことに、巻き込みたくないし。

「どうしても刀に夢中になると我を忘れちゃうんだ。
 俺、何か夏希ちゃん困らせてない?」

「……はい」

私はとっさに、嘘をつく。
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