女子高生夏希のイケメン観察記
「嫌だね。
 君たちを二人きりに、したくなくてここにいるのに」

……どうして?

「奏らしくないなー、そんなこと言って。
 何を俺に秘密にしてるのさ」

智さんが唇の端を歪める。

「秘密?」

奏さんも、鳶色の瞳を細めつつ、形の良い唇を微かに歪める。
軽く傾げた首に合わせ、柔らかそうな茶色い髪がさらりと揺れた。

「僕はただ、なっちゃんを自分のモノにしたいだけだよ。
 邪推は無用」

「うそ……」

と、私が呟く声に被せるかのように智さんが言う。

「奏らしくない、見え透いた嘘は止めてくれない?
 本気で落とすならとっくに落としてるだろう?
 10日もあったのに」

「あいにく、陰でこそこそするのは苦手なタイプで」

「それは初耳」

……友達同士の会話とは思えない。

一言一言交わすたびに、火花が見えてくるような重たい会話がいつもの口調で続いている。
< 93 / 163 >

この作品をシェア

pagetop