女子高生夏希のイケメン観察記
「もしもし~。
 僕僕。
 だーかーら、そういう詐欺はないんだって。
 あったとしても、どうせはした金しかとっていかないから、龍堂寺家にとって、大した被害にはならないよ。
 なんでそんなに詐欺を警戒してるのさ。
 何かあった?
 あ、何かあったのはこっちなんだけどね、もちろん。
 ついに智が人間の女性を抱きしめるという快挙を今、目の当たりにしてるんだ。
 本当だって。
 写メ送ろうか?
 だからさー、お祝いにお茶点てに来てよ。
 別にノンカフェインの紅茶でもいいけど。
 ん? だって僕一人で夜の営みを聴かされることになったらちょっと照れるじゃない。だから、宜しくね。
 UNO? 持ってないし、それ二人でやってもツマンナイでしょ?
 将棋だったら相手してあげてもいいけどねー。
 そうそう。
 じゃ、待ってるね」

私が智さんの胸に顔を埋めて泣いているとき、ごく近くで軽い口調で奏さんがそんな電話をかけていた。
電話の相手は間違いなく久遠さん。

そうして。
電話を切った後、別人のように拗ねた口調で切り出した。

「ゴーストバスター再開するなら、三人そろえなきゃ、ダメだろ」

「……やっぱり霊がついてんだ」

智さんが低い声で呟く。

「お前に心配かけたくなかっただけだよ。
 霊退治は、お前じゃなきゃ出来ないんだからな」

悲壮感を帯びた奏さんの声が、静かな部屋にポツリと響いた。
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