女子高生夏希のイケメン観察記
「久遠。
 そういう戯言は、俺の腕の中で泣いてみてから言うべきじゃないかな?」

……なんですって?

私は呆気にとられて智さんを見た。
口許に挑発とも取れるような笑みを浮かべて、久遠さんを見つめている。

えっと、ご冗談ですよね?

久遠さんは一瞬呆気に取られた顔をしたが、すぐに表情を整える。
そして、こちらも一級品の微笑を携えて、照れも迷いも無しに智さんを見据える。

久遠さんの金髪が、風も無いのに揺らめいたようにすら見える。

「それは楽しみだな」

……はい?


二人の視線が怪しく絡み合っているように見えるのは、その。
私の勘違いってことで、いい……んですよね?


どうしよう。
この展開が、私にとっての新しい世界への第一歩だったら。
< 97 / 163 >

この作品をシェア

pagetop