永遠の絆

今更ながらに思った。

あの時、一発でもいいから雅樹を殴っとけば良かった。


何で雅樹の事、知ってて…、何でそこまでして付き合ってたの?

何で妊娠してんの?


何で…、何で?

思い浮かぶ事は沢山あって、葵の言ってた“好きだから”って言葉を思い出した途端、あたしの胸が苦しくなった。


看護師さんが姿を消した後、あたしは頭を抱えた。

どれくらいの時間が過ぎていったのかも分からない。

だけどカナリの時間が経っているのは分かる。



時又、何でか分かんないけど翔の顔が浮かんできて“何してんだろ…”って思ったりもした。


随分と経った後、ガタン…とドアの閉まる音がして頭を上げると今にも涙が出そうと言う葵が立っていて、思わずあたしは立ち上がった。


立ち上がった瞬間、葵はあたしに駆け寄り力一杯あたしを抱き締めた。

微かに震えるその葵の身体をあたしはそっと抱き締める。


徐々に啜り泣く声が大きくなり「ごめんね。ごめんね」って葵は声を出して泣いていた。


その言葉が誰に言っているのかは分かる。




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