永遠の絆

「パパー…」


不意に聞こえてきた子供の声に反応し、あたしは聞こえたほうに目を向ける。

小さな女の子が笑顔で走ってパパの胸に飛び込んだ。


その光景を見て、さっきまでの笑みが一気にあたしの顔から消えた。

たまに見る夢と、今目の前で起っている現状が被る。


だからと言って、あの頃に戻りたいとも思わないし、パパに会いたいとも思わない。

ローンだけ置き去りにして行った父親が、今現われてもあたしは父親とは認めないだろう。


「みぃちゃん?」


ボーっとしてた思考の中、翔の声で我に返り、素早く顔を上げる。


「どした?」

「何にもー、」


そう言って、あたしは曖昧に笑った。




< 260 / 595 >

この作品をシェア

pagetop